2007-01-01から1年間の記事一覧

先天異常の医学―遺伝病・胎児異常の理解のために

なぜ、日本のすべての新聞、雑誌、放送のジャーナリストが、一九六一年十一月二十七日の西ドイツでの回収決定、そしてその後の何回も繰り返された西ドイツ政府の薬の回収についての呼びかけ、英国やスウェーデンなどの薬の回収のニュース、翌六二年三月のア…

先天異常の医学―遺伝病・胎児異常の理解のために

奇形は英語でmonsterというが、その語源となったのはラテン語で、予告するmoneoという動詞から導かれたものであるという。これは奇形がなにか恐しいこと、不吉なことを予告するという考えから発したものである。このように、ヒトおよび動物の奇形は、古くか…

先天異常の医学―遺伝病・胎児異常の理解のために

精子形成のときは、男性細胞のすべてにあるX染色体とY染色体は、別々の精子に入るから、精子では、X染色体の入ったものと、Y染色体の入ったものと二種類ができる。しかし、卵子では、女性細胞のすべてにある父親由来と母親由来の二本の染色体のうち、どちら…

私は赤ちゃん

最後に主人公の「赤ちゃん」についてですが、彼は幸福な子です。だがママが電気製品の利用で余暇が多くなるにしたがって「育児過剰」になる危険を多分にもっています。育児の本をいく冊も買って読みくらべているなどというママも確かに過剰型です。 危険の起…

赤ちゃんは世界をどう見ているのか

ところが生後数週の赤ちゃんは、お母さんが髪型を変えたり、眼鏡をはずしたりするだけで、誰だかわからなくなることがある。この頃は、目につきやすい外枠の特徴でお母さんを区別しているようだ。 マスクしたまま授乳しようとしたら一瞬ギャースカやられた(…

赤ちゃんは世界をどう見ているのか

動きを見ることは、形を見ることとはまったく異なる。なんと、モノの形ははっきりわかるにもかかわらず、動きがまったく見えない脳損傷患者が見つかった。非情に稀なケースで、動きを担当する脳の部位だけがピンポイントに損傷を受けてしまったのである。 こ…

赤ちゃんは世界をどう見ているのか

もうひとつ特徴として、赤ちゃんはコントラストの強いものを見やすいことがある。大人でも、コントラストの弱いものよりは強いものの方が、見やすい。だが、あまりにもコントラストが強すぎると目が痛くなるように、中程度がちょうどよく見える。この大人の…

おかゆ一杯の底力

私の名は「米子」。親戚に「麦子」さんもいました。伯母の名は「あは(粟)子」(アワコ)。でも自尊心が高かったあは子伯母は、この名が嫌だったようです。 きっとアワは米より劣るとか米の代用食だとか、米がとれないところでの穀物として、飢えや貧しさな…

子どもという価値

それは、一言でいえば子どもの命がどう決まるかの違いです。コンスタンツェは結婚したとき、子どもを六人欲しいなどと思ったのではないでしょう。何人欲しいなどと考えるいとまもなく、子どもは次々と生まれてきたのです。結婚し夫婦生活をもった結果、妻は…

赤ちゃんの歴史

間引きの第一の原因は貧困故の生活苦である。これは農民のみならず、扶持の少ない武士も同様であった。天災や飢饉の年に増えていることがその証拠である。この行為は支配者に訴える、あるいは反抗の手段との見方もある。第二の理由は不義の子、私生児の場合…

赤ちゃんの歴史

当時の事故のうちで特筆すべきものに圧殺があった。赤ん坊を押し潰して死なせることである。多くは両親、とくに母親と同じベッドで寝ることで起こる事故なので若干の教会では乳児の添い寝を禁止していた。この措置は乳児への夜間授乳を妨げる結果となった。…

世界の食文化(18 )ドイツ

穀物はパンにして食べるだけではない。粉を麺に加工して、つまり広い意味でのパスタにして食べることも多い。パスタはイタリア料理の専売特許ではなく、ドイツ料理の中にも定着している。ただし地域差が大きく、南ドイツでは大いに食されるが北ドイツではあ…

雪の中の三人男

夕食は無事にすんだ。ハーゲルドンは牛肉入りのうどんを出された。隣のテーブルで前菜と、山鶉の蒸焼を食べていた客は、まるで牛肉入りのうどんが世にも稀な珍味ででもあるかのように、ハーゲルドンのスープ碗をじろじろ眺めた。 つまり「牛肉入りうどん」と…

雪の中の三人男

クンケル夫人の琥珀織の服がキュッキュッと鳴った。彼女は前線を検閲した。皿の位置を一つ直し、フォークを一つひねった。 「きのうは牛肉入りのうどんだったわ」イゾルデが憂鬱そうに言った。「今日はウィンナー・ソーセージと白陰元。百万長者ともあろうお…

お産の知恵

ニューイングランド地方では、アンナ・ハッチンソンという悪名高い助産婦の存在が知られています。彼女は1634年に、夫とボストンに来て、以来、ニューイングランドを転々とし、法律や信仰を無視して助産婦活動を行い、1644年にはロードアイランドに移り、さ…

お産の知恵

しかし、ゼンメルワイスがベニスで休暇を過ごし、ウィーンに帰ってきたとき、コレストスカが急死してしまっていたのです。コレストカは、病理解剖のとき医学生が彼の腕に、メスでわずかな傷をつけたのが原因で、悪寒と発熱の末に亡くなったのでした。 コレス…

お産の知恵

玄悦は1766年(明和3年)に産科の専門書『産論』全4巻を著していますが、このとき彼は六七歳になっていました。『産論』の中で玄悦は、妊娠の日数は280日で、前後1、2週のずれがあっても正常であるとしています。悪阻(つわり)は、45日から50日続くものとし…

お産の知恵

稲生正治(1607~78年)は、大阪の人で、彼の著した『螽斯草』は、「胎教」、「保養」、「順産」「産後治療」、「祈祷」などの項にわけて書かれています。 胎教のだいじなことは、古くから説かれていますが、この本には、「妊娠中は仰向けに寝るときは枕を高…

たのしいムーミン一家

「よろしい。じゃあ、きみたちのパーティーをつづけたまえ。わしはきみたちのために、ちょっとしたまほうをつかって、じぶんをなぐさめることにしよう。そうだ、きみたちのひとりひとりに、一つずつまほうをかけてあげよう。さあ、みなさん、なにかのぞみが…

植物学とオランダ

アジサイといえばシーボルト、お滝さんと三題話のように、誰でもがシーボルトとの関連を知っていよう。シーボルトが採集した標本や、川原慶賀が描いたアジサイの仲間の絵などに添えられた名称からは、少なくともシーボルトが来日した頃にアジサイと呼ばれて…

母乳

母性愛は長いあいだ本能であると考えられてきました。自己保存本能や種族保存本能と同じように、すべての女性は生まれつきそういう本能をもっていると考えられてきたのですが、それはすべての女性が生得的にもっている欲求であるとは認めがたいとおもわれま…

花と木の文化史

江戸時代の園芸文化はアジアの花卉園芸文化の第二次センターとして、日本的特色を発揮して、大発展をした。それは中国という第一次センターを凌駕し、また西ヨーロッパに優るとも劣らずというより、一時期、たとえば江戸中期の元禄時代などには、西ヨーロッ…

花と木の文化史

花卉園芸の歴史をみると、世界の歴史の中に登場するすべての諸民族、諸国家に、それぞれの固有文化に応じて、固有の花卉文化が発達してきたというわけのものではない。花卉園芸文化は、ある社会で、その時代の生産力段階とか、社会構造にピッタリ対応して発…

花と木の文化史

日本では、比較的古くから庶民のなかに花卉園芸文化が浸透していた。 幕末にプラント・ハンティングに来たフォーチュン(この人については後述する)は、つぎのように述べている。 「馬で郊外の小じんまりした住居の農家や小屋の傍を通り過ぎると、家の前に…

新生児

さて流産や早産で、陽の目を見ずに亡くなっていった我が子への、母親たちのやるせないかなしみを、旅芸人の流転の点景として、ひっそりと、巧みにちりばめて見せたのは、川端康成だろう。それがまた『伊豆の踊子』のコーダに見られる「甘い快さ」のみごとな…

新生児

何回も聞いた産声だが、いつごろからか、赤ん坊は何で泣くんだろう、何故泣くんだろう、泣かなくてもいいのに……と思うようになった。生れても、全然泣かなかったという子もいるようだ。全くどこにも異常なく、元気に育ったが、この子は産声もあげなかったし…

新生児

そして最後の腹圧(りきみ)で、しぼり出されるように、全身が出てくる。 一瞬、虚空をつかむ。腕をいっぱいに拡げてもがく。顔をしかめて、しゃくり上げながら、息を大きく吸い込む。……始めて(ママ)の息だ。 次の瞬間、それを吐き出す。そのとき強い産声…

島おくらについて(野菜の箱に入っていたチラシ)

島おくらは沖縄在来の品種です。おくらというと、一般には断面が五角形で角ばった形をしていますが、島おくらは角が丸いのが特長。実も非情にやわらかく、つるつると喉を通る喉越しの良さをお楽しみいただけます。 <中略> 沖縄のおばぁーたちはおくらのこ…

青春かけおち篇

横を見ると、しのぶはまだスヤスヤと眠っている。 ちょうど浜名湖のあたりだろう、遠くの闇の中に漁火が浮かび、それがチラチラとゆれていた。 しのぶが目を覚ましたのは、名古屋をすぎる頃だった。 「起きてたの」 「うん」 「ずっと寝顔を見続けてくれたの…

被差別の食卓

アメリカと同様に、オクラを使ったブラジル料理のほとんどは、黒人料理といって良いだろう。だからバイーア州の家庭料理には、オクラを使ったものが多い。 日本語でも英語でも「オクラ」と呼ばれるこの野菜だが、その名称のルーツはアフリカ言語である。奴隷…