赤ちゃんは世界をどう見ているのか

 もうひとつ特徴として、赤ちゃんはコントラストの強いものを見やすいことがある。大人でも、コントラストの弱いものよりは強いものの方が、見やすい。だが、あまりにもコントラストが強すぎると目が痛くなるように、中程度がちょうどよく見える。この大人の見方と比べると、赤ちゃんの眼には、より強い激しいコントラストの方が見やすく映る。

 コントラストの見やすさは視力発達と同じように、生後半年をピークとして急速に成長する。そして生後半年をすぎたところで、ちょうど大人と同じように、中程度が一番見やすい状態となる。視力という観点からは、生後半年が大人と同じになるためのひとくくりとみなしてもよいのだ。

 この視力が発達する時期に見られる面白い現象がある。縞柄のトラのぬいぐるみや服を、赤ちゃんは好んで注目する。縞の柄がある程度広く、縞と縞のコントラストが激しいほど、注目度は上がる。髪の毛と顔の境、黒目と白目のコントラストも、赤ちゃんの興味を引くもののひとつだ。

 そもそも赤ちゃんは、複雑な図形を積極的に見るという特徴がある。明暗のコントラストの強い縞柄は、赤ちゃんが好む複雑な図形のひとつなのだ。

 実はこうした赤ちゃんの好みに、急速な視力発達の鍵がある。

 赤ちゃんの視力向上の背景には、脳や眼などの器官の完成がある。この完成を促すために必須なのが、外界からの刺激だ。それがこの、複雑な図形を見る行動によって支えられているのだ。複雑な図形を見ようとする行動は、今の視力で解像できる最大限の細かな画像を入力することにつながる。これは視覚機能を刺激し発達を促すことになるのである。

 おそるべしシマジロウ、ということか?(アンチベネツセな思いがさらに加速してしまう…)


赤ちゃんは世界をどう見ているのか (平凡社新書 (323))

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