花と木の文化史

 花卉園芸の歴史をみると、世界の歴史の中に登場するすべての諸民族、諸国家に、それぞれの固有文化に応じて、固有の花卉文化が発達してきたというわけのものではない。花卉園芸文化は、ある社会で、その時代の生産力段階とか、社会構造にピッタリ対応して発展してくるものであると考えるのは大きなあやまりである。花卉園芸文化は、衣食住の文化のように、人間生活の生理的必要に根ざして、あらゆる社会でそれなりの固有性のある文化が生み出されるという性格のものではない。高い生産力、安定した社会構造などは、高度の花卉園芸文化のために、不可欠な要因となっている。しかしその要因が満たされれば、高度の花卉園芸がかならず生まれてくるかというと、歴史はそうではなかったという事実を示す。たとえば古代ギリシア、古代インドは、古代の輝かしい大文明を生んだが、その文化の中では、花卉園芸は皆無とはいわないまでも、きわめて貧弱な程度にとどまっていたのである。

確かにチンギス・ハーンさんなども園芸に興味なさそうだしな。

花と木の文化史 (岩波新書)

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