2006-10-01から1ヶ月間の記事一覧

マグレブ紀行

面と非具象 それにしても、造形表現における地中海の北側の「ひとがた」のひしめきに対する、マグレブの幾何学模様の氾濫は、何というきわだった対照であろうか。イスラム世界における幾何学模様の発達を説明するのに、よく偶像崇拝の歴史ということがもちだ…

おとうと

「ほんとに姉さんやってごらんよ。いつも姉さんじみすぎるんで人にばかにされるんだよ。」 「そうかしら。じみは粋の通り過ぎってね。はでは幼いのよ。はでに飽きてからやっと粋になりたがるという順で、その粋をまた通り越して、じみに納まるんだそうだけれ…

地下室の手記

…人間は到達を好むくせに、完全に行きついてしまうのは苦手なのだ。もちろん、これは、おそろしく滑稽なことには相違ないが。要するに、人間は喜劇的にできているもので、このいっさいが、とりもなおさず、語呂合せの洒落みたいなものなのだ。しかし、それに…

波うつ土地

わたしと男は、「好み」がちがうというよりも、「なにか」がちがうのである。わたしが男との、その「なにか」のちがいを不愉快に思うよりは、おそらく男の方が不愉快さの度合いは大きいし、またさらに大きくなっていくだろうと、わたしは思っているのである…

波うつ土地

「すっごく、かわいい顔したもんね。あの、かわいい顔を見たんだもん、だからもう、どんなにスゴんでもだめだよ」と男はその後、なにかある度にいうようになった。わたしの「カワイイ顔」は、男のとった鬼の首だったのである。男によるとわたしは性交する前…

波うつ土地

男が喋らないのは、無口とかハニカミが強いとか口下手とかではなく、喋ることがないのだとわたしは意地悪く考えた。けれども、「コブシとはですねえ」などと、たいていの人が知っている程度の話をいかにもおもしろおかしいという風に喋ってくれるのに相槌を…