たのしいムーミン一家
「よろしい。じゃあ、きみたちのパーティーをつづけたまえ。わしはきみたちのために、ちょっとしたまほうをつかって、じぶんをなぐさめることにしよう。そうだ、きみたちのひとりひとりに、一つずつまほうをかけてあげよう。さあ、みなさん、なにかのぞみがあったらいいなさい。― そら、ムーミン家の人たちからさ。」
ムーミンママは、ちょっとあんしんしてから、こういってきいてみました。
「それはなにか、目に見えるものですか。それとも、目に見えないものでもいいんですか。わたしのいう意味がわかって? 飛行おにさん。」
「ああ、わかるよ。目に見えるものなら、もちろんやさしい。しかし、目に見えないものだってかまいませんよ。」
と、飛行おには答えました。
「そんならわたし、おねがいしますわ。― スナフキンのいなくなったのを、ムーミントロールがもうかなしまないようにって。」
と、こうムーミンママはたのみました。
「あれっ。」
と、ムーミントロールは、赤くなっていいました。
「そんなに人目につくとは、ぼく、思わなかったがなあ。」
そのとき飛行おにが、さっとマントをひとふりしました。と、たちまちかなしみは、ムーミントロールの心から、とびさっていきました。スナフキンにたいするあこがれは、またあえる日をまちうける心にかわってしまったのです。そしてこのほうが、ずっと気持ちのよいものでした。
- 作者: トーベ・ヤンソン,Tove Jansson,山室静
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1980/11/10
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