たのしいムーミン一家

「よろしい。じゃあ、きみたちのパーティーをつづけたまえ。わしはきみたちのために、ちょっとしたまほうをつかって、じぶんをなぐさめることにしよう。そうだ、きみたちのひとりひとりに、一つずつまほうをかけてあげよう。さあ、みなさん、なにかのぞみがあったらいいなさい。― そら、ムーミン家の人たちからさ。」
 ムーミンママは、ちょっとあんしんしてから、こういってきいてみました。
「それはなにか、目に見えるものですか。それとも、目に見えないものでもいいんですか。わたしのいう意味がわかって? 飛行おにさん。」
「ああ、わかるよ。目に見えるものなら、もちろんやさしい。しかし、目に見えないものだってかまいませんよ。」
と、飛行おには答えました。
「そんならわたし、おねがいしますわ。― スナフキンのいなくなったのを、ムーミントロールがもうかなしまないようにって。」
と、こうムーミンママはたのみました。
「あれっ。」
と、ムーミントロールは、赤くなっていいました。
「そんなに人目につくとは、ぼく、思わなかったがなあ。」
 そのとき飛行おにが、さっとマントをひとふりしました。と、たちまちかなしみは、ムーミントロールの心から、とびさっていきました。スナフキンにたいするあこがれは、またあえる日をまちうける心にかわってしまったのです。そしてこのほうが、ずっと気持ちのよいものでした。

ああ、そうだ。どんなマイナス感情も「待ち受ける心」に変えてしまえばよいのだ。それはなんてステキな魔法なんだろう。てゆーか、この巻の圧倒的な主役はどう考えても飛行おにだよなぁ。彼はみんとうにほりょくてきなひとだ(トフスランとビフスラン風に)
たのしいムーミン一家 (講談社 青い鳥文庫)

たのしいムーミン一家 (講談社 青い鳥文庫)