2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

てんやわんや

私は、たぶん、花輪兵子を訪ねるであろう。しかし、大きな期待は持っていない。私の頼みとする相手は、もはや、一人も日本にいない。ただ、生来の臆病と非力の犬丸順吉個人だけである。一茎のワラのような私だが、今は潔く、敗戦国の暗い激流の中に、身を投…

宇宙百貨活劇

…とくにオセアニア諸国の鳥には個性的な種類が多く、気にいっている。アオアズマヤドリという黒い鳥が面白い。この鳥の雄は名前のとおり、地面にあずまやを作って雌を招く。そのさい、青い色の装飾品(ほかの鳥の羽根や、植物、壜のかけらや、はてはプラスチ…

人はなぜ逃げおくれるのか

一九一七年の一二月六日、午前八時すぎのことであった。フランスの弾薬輸送船モンブラン号とベルギーの輸送船イモ号が、操船ミスと相互にかわした信号の誤解によって衝突して、モンブラン号の積荷であったベンゾールが流れ出して引火した。 本当にどうでもよ…

黒いチューリップ

「おお!」と、グリフュスは、怒りで熱っぽい調子から、勝利を確実に手にしたものの示す皮肉な調子に移りながら、さらに言葉をついだ。「ああ! 無実に泣くチューリップ作りさま! ああ、おやさしい学者先生さま! あなたがあたしどもをお殺しあそばすので?…

黒いチューリップ

七世紀このかた、つぎのような警句を標語とする、気がきいて素朴な一派に彼は属していた。またその標語は一六五三年にはその信奉者のひとりによって拡大解釈されたのである。 『花を侮辱することは神を冒涜することである』 一六五三年、他派をぬきんでても…

数学物語

さてパスカルは、おとうさんから数学の勉強をとめられていました。しかし、とめられるとなおやりたくなるのが人情です。パスカルもだんだん大きくなるにつれて、数学の勉強がしたくてたまらなくなってきました。しかしおとうさんはなかなか許してくれそうも…

数学で何を学ぶか

ところで、鏡にうつしたときに、なぜ左右が反対になって、上下は反対にならないか、知っていますか。眼が横についているからだ、なんてのは嘘で、片目をつぶっても同じです。 これは、本当のところは、上下も左右も反対になってはいないのです。反対になって…

砂糖の世界史

一二世紀のビザンティン帝国の皇帝に仕えた医師も、「熱冷まし」としてバラの花の砂糖漬けを処方していますが、このバラの花の砂糖漬けは、ずっとのちまで西ヨーロッパでも、とくに結核の熱に対する解熱剤として重宝されました。もっとも、バラの花に限らず…

砂糖の世界史

砂糖プランテーションは、砂糖きびの植え付けや刈り入れに集団労働を必要とし、また取り入れや、取り入れた砂糖きびの運搬を、できるだけ短時間で済ます必要から、そこでは遅刻などせず、時間を正確に守って働く集団が必要でした。集団で働くことも、時間を…