2007-10-01から1ヶ月間の記事一覧

花と木の文化史

江戸時代の園芸文化はアジアの花卉園芸文化の第二次センターとして、日本的特色を発揮して、大発展をした。それは中国という第一次センターを凌駕し、また西ヨーロッパに優るとも劣らずというより、一時期、たとえば江戸中期の元禄時代などには、西ヨーロッ…

花と木の文化史

花卉園芸の歴史をみると、世界の歴史の中に登場するすべての諸民族、諸国家に、それぞれの固有文化に応じて、固有の花卉文化が発達してきたというわけのものではない。花卉園芸文化は、ある社会で、その時代の生産力段階とか、社会構造にピッタリ対応して発…

花と木の文化史

日本では、比較的古くから庶民のなかに花卉園芸文化が浸透していた。 幕末にプラント・ハンティングに来たフォーチュン(この人については後述する)は、つぎのように述べている。 「馬で郊外の小じんまりした住居の農家や小屋の傍を通り過ぎると、家の前に…

新生児

さて流産や早産で、陽の目を見ずに亡くなっていった我が子への、母親たちのやるせないかなしみを、旅芸人の流転の点景として、ひっそりと、巧みにちりばめて見せたのは、川端康成だろう。それがまた『伊豆の踊子』のコーダに見られる「甘い快さ」のみごとな…

新生児

何回も聞いた産声だが、いつごろからか、赤ん坊は何で泣くんだろう、何故泣くんだろう、泣かなくてもいいのに……と思うようになった。生れても、全然泣かなかったという子もいるようだ。全くどこにも異常なく、元気に育ったが、この子は産声もあげなかったし…

新生児

そして最後の腹圧(りきみ)で、しぼり出されるように、全身が出てくる。 一瞬、虚空をつかむ。腕をいっぱいに拡げてもがく。顔をしかめて、しゃくり上げながら、息を大きく吸い込む。……始めて(ママ)の息だ。 次の瞬間、それを吐き出す。そのとき強い産声…

島おくらについて(野菜の箱に入っていたチラシ)

島おくらは沖縄在来の品種です。おくらというと、一般には断面が五角形で角ばった形をしていますが、島おくらは角が丸いのが特長。実も非情にやわらかく、つるつると喉を通る喉越しの良さをお楽しみいただけます。 <中略> 沖縄のおばぁーたちはおくらのこ…

青春かけおち篇

横を見ると、しのぶはまだスヤスヤと眠っている。 ちょうど浜名湖のあたりだろう、遠くの闇の中に漁火が浮かび、それがチラチラとゆれていた。 しのぶが目を覚ましたのは、名古屋をすぎる頃だった。 「起きてたの」 「うん」 「ずっと寝顔を見続けてくれたの…

被差別の食卓

アメリカと同様に、オクラを使ったブラジル料理のほとんどは、黒人料理といって良いだろう。だからバイーア州の家庭料理には、オクラを使ったものが多い。 日本語でも英語でも「オクラ」と呼ばれるこの野菜だが、その名称のルーツはアフリカ言語である。奴隷…

被差別の食卓

カポイエラとは、黒人奴隷があみだした舞踏と格闘技を掛け合わしたような踊りのことだ。白人たちには踊っているように思わせておいて、実際は格闘技の練習をしていた、というのが本来のルーツだ。 現在のサルバドルでは、観光客向けのショーとして屋内外で盛…