2006-03-01から1ヶ月間の記事一覧

松田嘉子『ロトフィ・ブシュナーク日本公演のパンフレット』

そのような才能に恵まれた素晴らしい歌手の歌声を、一晩中聞いて楽しむことはサハラ(夕べ)と呼ばれた。サハラをこなし、聴衆にタラブを与えられる歌手が最高の歌手である。タラブとは、これもアラブ人がよく口にすることばで、音楽や歌によって得られる恍…

チューリップ・鬱金香 -歩みと育てた人たち-

ところで、岩崎常正が本草図譜に引用した李時珍の本草綱目の鬱金香は、チューリップとは全く関係のない植物で、現在のところ、和名も学名も科名も未詳である。岩崎常正が何を根拠にしてチューリップに鬱金香という名前をあてたのか、解説文だけでは意図はわ…

イスラムからの発想

その一例は、「ペルシア版おとぎ話のウサギとカメ」を述べるのが分かりやすい。すなわち、古代ギリシア人イソップが作者といわれるが、その確証はともかくとして、自信過剰のウサギがカメと競争して負ける寓話は世界諸国に流布している。しかし、ペルシアの…

イスラムからの発想

そして、天国に入ることを許された者は、この世の酒と違って絶対に悪酔いしない美酒や最上の食べ物、それに何度まじわろうと永遠に処女だという、不思議な天女を与えられて、至福の暮らしとなるのだ。だから、そんな楽園へ行けるなら、死も恐れずに戦うと、…

鳥のように獣のように「作家の背後にある『関係』」

ぼくの「十九歳の地図」の、かさぶただらけのマリアさまは、小林美代子さんをモデルに借りた。それで、けんかして、音信が途絶えた。それまで朝から晩まで、もしもしと彼女独特の蚊の鳴くような声で電話がかかり、彼女の一方的にしゃべりまくる小説の構想を…

ちひろのことば

大人になること 人はよく若かったときのことを、とくに女の人は娘ざかりの美しかったころのことを何にもましていい時であったように語ります。けれど私は自分をふりかえってみて、娘時代がよかったとはどうしても思えないのです。といってもなにも私が特別不…

鳥のように獣のように「映画ノート」

この大島渚という監督は悪くいえばめざわりで、良くいえば気がかりな存在だが 本文の内容は正直どうでもよく、ただひたすらこの素敵な言い回しにしびれた。 鳥のように獣のように (講談社文芸文庫―現代日本のエッセイ) 作者: 中上健次,井口時男 出版社/メー…