雪の中の三人男

クンケル夫人の琥珀織の服がキュッキュッと鳴った。彼女は前線を検閲した。皿の位置を一つ直し、フォークを一つひねった。

「きのうは牛肉入りのうどんだったわ」イゾルデが憂鬱そうに言った。「今日はウィンナー・ソーセージと白陰元。百万長者ともあろうおかたが、もうすこし気のきいた食欲をお持ちになってもいいんじゃないかしら」

「枢密顧問官様はお口にあうものを召しあがるのよ」クンケル夫人はとっくりと考えたあとでそう言った。

 図書館で立ち読みしていたら夢中になってしまい、結局もういったん借りて再読。しょっぱなのこのシーンからして細部に至るまでおもしろすぎ。いきなり「牛肉入りのうどん」だなんて!


雪の中の三人男 (創元推理文庫 508-2)

雪の中の三人男 (創元推理文庫 508-2)