青春かけおち篇

 横を見ると、しのぶはまだスヤスヤと眠っている。
 ちょうど浜名湖のあたりだろう、遠くの闇の中に漁火が浮かび、それがチラチラとゆれていた。
 しのぶが目を覚ましたのは、名古屋をすぎる頃だった。
 「起きてたの」
 「うん」
 「ずっと寝顔を見続けてくれたの」
 「うん」
 「嬉しい」
 「男として当然のことだよ」

どこがどう「男として当然のこと」なのか、私にはさっぱりわからん(しのぶの喜びもわからん)。
青春かけおち篇 (角川文庫 (5942))

青春かけおち篇 (角川文庫 (5942))