むずかしい愛(「ある海水浴客の冒険」より)

そのときイゾッタ夫人は女性というものがどれほど孤独な存在であるか悟った。同性のあいだで連帯感が自発的な善意のあらわれとして生じることが、(たぶん連れの男性との緊密な同盟によって分断されるせいなのだろう)どれほど稀なことか。助けを求められることを予め察知して、相手が人にはいえない難儀な状況にあることは了解しているという合図を、連れの男性に悟られないように送ってよこすことなどまずありはしない。絶対、女性には助けてもらえないだろう。しかも今の自分には連れの男性もいない。彼女は自分の力が限界に来ているのを感じていた。

男性が書いたとは思えねぇ!と思った。ここ最近の自分の経験から言っても、女性車両で席を譲ってもらえたのは制服姿の女子高生からの1回きりだ。てゆーか実際に声をかけてくれるのは、非スーツ姿の若い男がほとんどだ(これは彼らの疲労度合いの軽さや女性に自ら声をかけるということに対してのハードルの低さ、また私自身の身なりが発しているだろう社会属性の問題も大きいのだろうけれど)。


むずかしい愛 (岩波文庫)

むずかしい愛 (岩波文庫)