むずかしい愛(「ある読者の冒険」より)

避暑の女性はたいそう興味を示して彼の話に聞き入っていたが、時折、女性にありがちな、きまって的はずれな質問をした。

よく「質問のポイントがずれすぎ」と言われ「?」とさらに混乱してしまうのだが、それが女性としてありがちなことなのならば上等じゃないか。まったく気に病むことなどないじゃないか。と妙に開き直れてにやにや笑ってしまった。それにしてもこの短編集はどれもがめっぽうおもしろい、おもしろかった。翻訳もこなれていてリズムがよいので読みやすく、本当に気持いい。「ある写真家の冒険」なんてもう素晴らしすぎて、どうにかして映像化してもらいたいとさえ思う。このカルヴィーノというひとは一作ごとに作風がまったく違うそうだが、是非とも他の作品も読んでみたい。読むべし。


むずかしい愛 (岩波文庫)

むずかしい愛 (岩波文庫)