児童性愛者

「あなたはあなたの子どもを愛しなさい。話をなさい。無条件の思いやりを与えなさい。物を与えたりチボリ(コペンハーゲンの名高い公園)に連れて行くのではなく。子どもが求めているのは思いやりと愛よ。親からもらえなければ、他で手に入れようとする。まるで喉の乾いた動物のようなものよ。誰も近くに居なくて安心が得られなきゃ死んでしまう…」

 彼女は長い時間をかけてタバコを吸い、咳をした。その最中、受話器は持ったままだった。

「ちょっと待ってください」

 彼女は言った。鼻をかんでいる音が聞こえた。再び受話器をとると、彼女は短く鼻をすすりあげた、だが、声には涙の気配はなかった。

<中略>

「ええ、全て探してみます。少なくともできるだけのことをすると約束します。大丈夫ですよ……」

「大丈夫なんかじゃない! 私はもう絶対にふつうにはなれないわ。だって毎日、自分の中にあるのよ、それがあなたにわかる? このことを考えずに一時間たりともすぎたことはないのよ。私が死ぬまで一生つきまとわれるということが」

 このときだった。彼女が泣いたのは。何一つ抑制せず、激しく泣いた。

<中略>

「何でも好きなようになさいよ。使ってもいいし、使わなくてもいいわ。でも母と妹だけは巻き込まないで。父がどんなに病んだ人間だったかを母と妹に教える必要はないわ。今の私を生かしているのは息子よ。彼は、私に残された唯一の人間なの。それ以外、何もないのよ。だけど、私がずっと息子を愛していけるのかどうかもわからない。自信ないわ。私は一度も愛されたことがないから、自分が愛を知っているかどうか確信が持てないの。人生で、愛なんて実際に存在しているのかどうかわからなかった……」

ことの大小はともあれ、幼い頃にヤな性的トラウマをかかえさせられたことがある者の気持ちは、たぶん当事者にしかわからない。私にもいまだ許せない相手がいる。てゆーか成長してその意味を理解したとき、同時に自分はすでに薄汚れているのだと知ってしまったのがかなしかった。だからこそ、このヤな奴(含むヒロイック度200パーセントのナルな著者)ばかりが登場する本の中で唯一モニカのことだけは心から応援したいと思った。思う。…にしてもひどい訳だな。マジひどい。それとももとの文章からしてだめだめだったのか?


児童性愛者―ペドファイル

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