「かこさとしのひみつ展」における展示資料より

絵をかきましょう

みなさんがこれからいろいろべんきょうするために絵をならっておくとたいへんためになります

お店のかざりつけのお手つだい、かんばんをペンキ屋さんにどうぬってもらったらいいか、工場や家のみとり図をかいたり おへやの中のどうぐのおき方、本のならべかたなどを絵をよくならっておくと たいへんやくにたちます

絵はこのように みなさんがいろんなことをかんがえたり、しごとをするのにやくだつもので、おへやにかけておいて、ときどきながめたり あそびにするためのものではありません

絵が上手になるには

つぎの三つのことをまもってやると はやく上手になります

(1) かくまえに よくかくものを見ておくこと

(2) おもったとおり ぐんぐんかいてゆくこと

(3) さいごまでかくこと

たとえば「ゆり」のはなをかくとしますと、かくまえに「ゆり」のはなびらはもとはっくついているが、さきのほうはわかれている、はっぱはみぎとひだりに二まいずつでていて ぜんたいのかっこうが (実際は左右逆のカギカッコのようなものがここに手描きされている)のようになっている‥‥‥などということをよくみておくことが(1)です

こうやって おぼえこむくらいよく見ておくと もう「ゆり」のはなをみないでもかけるようになります 電車をかくにも家をかくにも一ばんはじめはよくみてかいてゆくのがはやく上手になる方法です

こうやってよくみたら「ゆり」のはなびらはしろくて なかがわの上の方に あかちゃ色のポチポチがある、はっぱはみどりいろで ちょっと青みがかっている、「ゆり」のにおいがつよいのでなんだかあたりがボーウとしていいきもちだ‥‥‥などおもったら そのおもったとおりぐんぐん色をぬっていきなさい もしはなびらがしろいはずなのにちょっとみどりがかってみえたらそうぬりなさい ひょっとしたらはっぱのみどりがうつっているのかもしれませんから‥‥‥

こうやってかきだしたら はなだけかいてはっぱをかかなかったり かびんをはんぶんでやめてしまったりしないで さいごまで かみのすみっこまできっちりかきましょう

この(1)(2)(3)をまもってかけば きっとだれでも「絵」がはやく上手になります

よくみて

おもったとおり

おわりまでかく

これが絵の上手になる方法です


「東京 大井みどりのいえ こどもしんぶん No.6」(1951年、7月29日)かこさとし


かこさとしにとって絵を描くということは思考を深めるということだったのね(なんという説得力!)