胎児の環境としての母体 幼い生命のために

 陣痛(自然な無痛分娩法は別)は、胎児の頭部に圧迫を与えるために必要なこととされています。その強い陣痛のもとに適切な時間の経過(前出)のもとではじめて行われる、胎児から新生児への呼吸の切り換えなのです。

 難産とは、その "経過がうまく行かない" 場合を指しているのです。陣痛が弱く、また娩出力も弱い。その状態では、胎児は適切な圧迫を受けませんから、呼吸を始める(産声をあげる)ための合図が不足した状態になったり、外に出てくるのにも時間がかかることになってしまいます(二二頁参照)。

*P22

 難産というのは、何も出産時に母体がひどい苦痛を覚えるというようなことではありません。出産が始まってから胎児が産声をあげるまでの状態が、正常に行かず、時間がかかりすぎたり、途中で母体が衰弱してしまったり、生れた新生児が衰弱しきっていて産声があがらなかったりという状態をいうのです。

 赤ちゃんは、母体内では胎盤(一〇一、一二二~一三九頁参照)を通してもらっていた酸素を、生れてすぐ産声をあげることで、自立呼吸にかえ、自分で酸素を得るように切り替えるのです。出産のとき、トラブルが起きれば、この切り換えがうまくいかなることがあります。

 これは、おとなの場合でいえば一種の窒息状態になっているのと同じです。窒息状態が長く続けば生きて行くことはできません。たとえある程度のところで窒息状態から開放されても、それが後遺症になる例は、おとなの場合にもみられるのです。

…ちょっと不安になる。