てんやわんや

 私は、たぶん、花輪兵子を訪ねるであろう。しかし、大きな期待は持っていない。私の頼みとする相手は、もはや、一人も日本にいない。ただ、生来の臆病と非力の犬丸順吉個人だけである。一茎のワラのような私だが、今は潔く、敗戦国の暗い激流の中に、身を投ずる覚悟である。

いかにもなユーモア小説なれど、こういうところにひじょうにしびれる。本当の自由ってなんなのだろ。みたいな。


てんやわんや (新潮文庫)

てんやわんや (新潮文庫)