数学物語

 さてパスカルは、おとうさんから数学の勉強をとめられていました。しかし、とめられるとなおやりたくなるのが人情です。パスカルもだんだん大きくなるにつれて、数学の勉強がしたくてたまらなくなってきました。しかしおとうさんはなかなか許してくれそうもありません。とうとうパスカルはおとうさんにかくれて、こっそり数学の勉強をするようになりました。外へ遊びに行っても、しばらくすると道の上に円や三角形の図を描いていっしょうけんめい勉強していました。こうして先生にも教わらず、本も読まずにパスカルの研究はだんだんと進んでいきました。

 ある日のことパスカルは、いつものとおり道ばたに三角形を描いて、長い間これをながめていましたが、とうとう

 三角形の内角の和は二直角である。

ということを、自分の力で発見してしまいました。

 前にもお話ししましたように、このことは古くから知られてはいたのですが、パスカルはだれからも何も教わらず、しかも独力でとうとうこんなすばらしい定理を発見したのですから、パスカルの喜びようといったらありませんでした。あまりのうれしさに、おとうさんから数学の勉強はしてはいけないといいわたされていることも忘れて、これをおとうさんに話しました。

 自分の子が数学の大天才であることを知ったおとうさんは、自分が数学の勉強を禁じてあったことも忘れて、

 「よくやった」

といってわが子を胸に抱いて涙を流して喜びました。これはパスカルがまだ十二歳のときのお話ですよ。

 いろんな意味でおもしろすぎ。てゆーか、せっかく外遊びに出たはずなのに一人でもくもくと地面にしゃがみ込んで数学に取り組む、なんてことをするから父親に「数学禁止!」とか言われちゃうんだよ。せっかくの戸外なんだからさー、身体を使うべきときはつかおーぜー。と思った。



数学物語 (角川ソフィア文庫)

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