花の男 シーボルト

 シーボルトは、日本の植物についての理解を深め、また日本人と接触する中で、日本では植物学と園芸が進んだ状況であることを知った。シーボルトは江戸参府に加わる以前からそのことを知っていたが、参府ではしばしばそれを目の当たりにすることができた。彼は、植物学の中でも経験に基礎を置いた分類学のような研究分野は、ヨーロッパと並行して日本で独自の発展をしていることを理解できたのである。

 例えば、植物名についてみると、日本人は、日常用いている名称のほかに、ヨーロッパの植物学での科学的なラテン名にも対応しうるような漢名をもっている。これらの点はケンペルもツュンベルクも指摘していることであったが、シーボルトはこうした二重の命名体系の存在から、日本人が植物についてかなりの知識を有しかつ体系化していると断じたのであろう。

 シーボルトはまた、日本人が植物を愛好し、多くの野生植物を庭に植え鑑賞していることを知った。庭園で栽培されている植物の一部は中国から導入されたものであることにも瞠目した。シーボルトを驚かしたのは、日本では日本の植物を解説した本草書や園芸書が数々出版されていることであった。その中には、多数の園芸品種があるサクラ、ウメ、キク、ボタンなどといった種属では専門書や種属誌に類する著作物さえあった。当時、園芸品種の育成、改良で日本は世界をリードしていたといってよい。

私も近所をぶらぶら散歩しては「下町ガーデニングの凄まじさ」にいつもくらくらしてるので、なんとなくこれはよくわかるような。きっと江戸の頃から何も変わってないんだろうなぁと。


花の男シーボルト (文春新書)

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