花の男 シーボルト

二〇〇一年に日本のレコード会社から、私たちのシーボルト、フィリップが残した「日本のメロディー」という七曲のピアノ曲前田健治氏の演奏によって公表された。音楽を愛し、当時の上級階級の人のたしなみにふさわしいピアノ演奏を楽しんだシーボルトではあるが、彼の作曲の腕前は凡庸の一言に尽きる。

直前で彼の親戚のアガーテ(ブラームスの「弦楽六重奏曲」は彼女への思慕を断ち切るために書かれたものだとも言われているそうだ)を、実際に彼女が歌うところを見たり聴いたりしたことがあるわけでもない(はずだと思う)のに「素人とは思えないほど甘く美しい美声の持ち主であったばかりでなく」などと賞賛しまくっていることを考えると、そのあまりの評価の差に笑う。てゆーか、いささかシーボルトが不憫にさえ思えてくる。まー、確かにCDを聴いた限り「日本のメロディー」はとりたてて褒めちぎりたくなるようなモノではなかったが…。


花の男シーボルト (文春新書)

花の男シーボルト (文春新書)