ファービアン

「一番困るのは、そのレーダっていうハンブルクの女が全然始めから彼を愛していなかったってことに気がついたんです。五年たってからじゃ遅すぎますよ。女がラブーデをだましたのは、あんまりたまにしかラブーデが彼女のところに行かなかったからではないんです。彼を愛してなかったからなんです。個人として考えが似ていただけで、全然彼女とは別なタイプの男だったんです。世の中にはそれと反対の場合もあるんですがね。ちょうど自分にピッタリ合ったタイプで、好きなんだけれど、個人として相手がどうしても好きになれないっていう」

いずれにせよ付き合ってみなければその微妙な齟齬はわからない、ということこそが問題なのだ(5年かけても10年かけてもわからないことだってある)。