イスラムからの発想

 そして、天国に入ることを許された者は、この世の酒と違って絶対に悪酔いしない美酒や最上の食べ物、それに何度まじわろうと永遠に処女だという、不思議な天女を与えられて、至福の暮らしとなるのだ。だから、そんな楽園へ行けるなら、死も恐れずに戦うと、イスラム軍の兵士たちが考えたのも当然だったであろう。

 しかし、私のようなひねくれ者(ひねくれ者、の箇所に傍点アリ)にとっては、このコーランにおける天国の光景は、どうしても納得できない。まず、永遠の処女妻を与えられるのは、男にとっては結構なことだろうが、女性の方はどうなるのか。だいいち、霊的存在にセックスが必要なのだろうか。それとも、天国においても人間は肉体的な存在となるのか。それらの点を数多くの神学者に尋ねてみたが、納得のいく答えは誰からも得られなかった。なかには、コーランに描かれた天国の光景は、もののたとえ(たとえ、の箇所に傍点アリ)であり、精神の幸福を官能の幸福で表現したものだ、などと説明した神学者もいたが、どう考えても詭弁である。

んだんだ。


イスラムからの発想 (講談社現代新書 629)

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