娘に語る祖国

 みな子よ、パパはおまえが、のびのびと育ってくれることを願ってますが、ただ、人の傷みや哀しさのわかる人になってもらいたいと思っています。傷つく女になってもらいたいと思っています。実際おまえの傷ついている姿を見たら、パパは狂おしいほどつらいでしょう。おまえを傷つけたやつを知ったら、殺してしまいたい気になるかもしれません。でも、そんなときパパは心の中で「明日はおまえのためにある」、そう叫びつづけます。だから、おまえも傷ついても、最後には「明日はきっといいことがある」、そう思ってください。


<おおはばに中略>


 それにしてもパパは、ほんとうにどっちの国の人間なんでしょうね。この問いかけをこれまでの人生の中で何度も繰り返してきました。でもパパは、韓国人というフィルターを通さずに、この世の中を見、人と対してきました。パパは目の前にいる人を信じて生きてきました。おまえにも、いま、目の前にいる人を信じて生きてほしいと思っています。信じて、騙され、傷ついても、そのときは例の「明日はきっといいことがある」です。おまえは女の子だから、ほんとうはとても心配なのですが、その人を信じなければ、その人の心の真の温かさにふれることはできないのです。

いろいろと言いたいこともあるが、それでもあまりにストレートな(暑苦しいほどの)作者から娘への強い思いについ大泣きさせられてしまった。あまり好きな作家ではなかったが、いきなり強い興味がわいてきた。こういう作風にはどうも弱い。

 


娘に語る祖国 (光文社文庫)

娘に語る祖国 (光文社文庫)