おとうと

「ほんとに姉さんやってごらんよ。いつも姉さんじみすぎるんで人にばかにされるんだよ。」

「そうかしら。じみは粋の通り過ぎってね。はでは幼いのよ。はでに飽きてからやっと粋になりたがるという順で、その粋をまた通り越して、じみに納まるんだそうだけれど、私のははでも粋も知らないうちからいきなりじみなんだから、ほんとはとても利口なんだけどね。そんな手間ひまかけていないで、じみへ行きついたんだもの。でもまあ島田に結うと、いくらか娘っぽくなるかもしれないわ。」

幸田文にはこういったちょっとしたキーが多いから(文章そのもののとんでもなく美しい魅力ももちろんだけど)話なんてもうどうでもいいやといった気分で衝動的に読み返したくなったりする。


おとうと (新潮文庫)

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