レーナ

 ある日曜日、わたしはレーナにたずねたことがあった。「大好きだった人が死んだあとって、どんな気持ちがするものなの?」
「ある朝、はじめて泣かないで起きることができたなって、そう思うでしょ。でも、次の朝はまた泣いてる。その次の日は、もしかしたら泣かないかもしれない。そうやって一度にちょっとずつだけ元気になって、そのうちにだいじょうぶになるんだ」
「悲しい気持ちって、すっかり消えちゃうの?」わたしはたずねた。「いつか、まったくだいじょうぶになっちゃうもんなの?」
 レーナは首をふった。「あたしはまだ。でも、あたしの人生はまだ終わってないからね」
 父さんとベランダにすわっていたその日、明日は母さんのことで泣かないで目が覚めるかどうか、わたしたちにはわからなかった。でも、その朝は太陽がさんさんと降り注ぎ、ココアがおなかをあたためてくれていた。その朝にかぎって言えば、わたしたちはだいじょうぶだった。

 

そうそう、最初はかなしくて、そしてさびしさになって、で、忘れる。でも完全に忘れたというわけではなくて、それは大丈夫になるという、そういうこと。そこまではわかっていた気がするけど、イコールそれは人生が続くということなんだ、と気付かされてハッとした。