蛇を踏む

「よくわからないけどね、しょわなくていいものをわざわざしょうことはないでしょ」

 コスガさんはそう言うが、どんなものをしょってどんなものをしょわなくていいのか、しょってみるまでは分らないような気がした。しかしコスガさんには言わなかった。

そのあたりの判断を実行前に下せるようになることこそが、いわゆるまっとうなオトナへの第一歩なのかもしれないが。なんてことはともかく、初めて読んだ川上弘美はたいへんおもしろかった。笙野頼子とはまた違ったなんともエロティックでシュールな世界。実に日常的な奇譚。どれも映像が見えてくるような作品ばかりで、特に最後の「惜夜記」はアニメだった。ところどころでイノセンスばりの映像が浮かんできてしょうがなかった。押井に映画化してほしい。


蛇を踏む (文春文庫)

蛇を踏む (文春文庫)