ソア橋の難問/シャーロック・ホームズの事件簿より

 そのホームズが、目的地に近づいてきたころ、だしぬけにわたしのむかいの席に腰をおろし———— 一等の客車は、二人で貸し切りのようなものだった ———— わたしの両ひざに手を載せたかと思うと、腕白小僧のような気分でいるときの彼の癖でいたずらっぽい目つきをして、わたしの目をのぞきこんだ。

「ワトスン、思い出したよ、こういう旅にきみは武器を忘れないってことをね」

 それは、ホームズのためでもあった。謎解きに夢中になったとたん、身の安全になどまったく気を配らなくなるホームズにとって、いざというときわたしのピストルが頼りになったことが一度や二度ではなくあったのだ。わたしはホームズにそう言ってやった。

「うん、うん、そうだな。そういうことには、ぼくはちょっとばかり抜けてる。それで、ピストルはあるんだろう?」

 わたしは尻ポケットからピストルを出してみせた。

 

少年少女向きに出ているホームズシリーズの表紙がなんとなくBLっぽいのはなんでだろう?と常々思っていたのだけど、年末年始に見たドラマの影響で何十年ぶりかにこれを読み返していたら妙に納得してしまった。これじゃあな…仕方ないよな…。