百合若大臣
百合若のことをおもうと、北の方は、もう じっとしておれなかった。
侍女たちをよび、百合若に へんじをおくることにした。侍女たちは、われもわれもと 手紙をかき、そのぶあついたばとともに、紫石のすずりとふで、それに おにぎりもそえた。
「さあ、一刻もはやく、とののところへ とどけておくれ」
緑丸は、おもいにもつをくわえ とびたった。しかし、緑丸もつかれていた。そのうえ、しっけをすいやすい 紫石のすずりに 手紙のたば、さらに おにぎり。
海上をとぶうち おもみにひかれ、だんだんおちていった。おちてはとび、とんではおちているうちに、ついには力つき、海へとおちていった。
ある日、緑丸をまちわびて 海べにでた百合若は、海にただよう、あわれな緑丸のしかばねを みつけたのだった。
「緑丸よ、おまえだけがたよりだったのに、なんとしたことか」
百合若は、鷹をだきしめて、なみだにくれた。
「おちてはとび、とんではおちているうちに」の様子を想像すると緑丸が不憫でしょうがない。だいたい侍女からの手紙なんていらないだろう、自重しろ自重!と思った。